fc2ブログ

十蘭草堂

小原庄助さん(1949)―お正月映画とゆーことで

あけましておめでとうございます。今年も廃墟行きます。展覧会行きます。芝居に行きます、旅に出ます。趣味の道に突っ走る十蘭草堂を応援よろしくお願いします。
さて、半ば投げ出すようなかたちで昭和ゴジラシリーズのレビューを終えました。充電期間をおきたいので別の映画を見ることにします。お正月映画にふさわしいものを選びたいわけだ。ということで新東宝の「小原庄助さん」の紹介に移りたいと思います。
杉本左平太(大河内傳次郎)という名家のおじさんがおりました。とっても気前が良くて、頼まれると断れない。寄付をポンポン出すことから村では彼を小原庄助さんと呼ぶようになりました。彼自身もおだてに弱く、それを気取っている節があります。野球のユニホームにミシン、戦後の日本にとっては貴重なものばっかりです。そんな生活を続けていればどんな金持ちだって窮地に追い込まれます。彼は最終的に先祖代々受け継いできた家具を競売にかけ、妻(風見章子)も彼女の兄が引き取り、彼はがらんどうの屋敷でひとりぼっちになってしまいました。そんなところに強盗の二人組がやってきます。彼らをやっつけた小原庄助さんは目の前に彼らを座らせこう言い放ちました。「物がほしければ二,三日前に来れば良かったんですがねぇ。そうすればまだがらくたも残っていたんですが。」(大意)懐が深いですね。
屋敷に「小原庄助さんどうして身上つぶした~」という書き置きをして彼は駅に向かいます。その道に彼を追いかけるひとりの女性の姿が。それは彼の奥さんでした。「早くしないと汽車に間に合わないよ」と彼女に呼びかけ、ふたりは駅への道を歩いていきます。
とまあこんな感じの話です。心ならずも家柄にとらわれてしまっている杉本左平太の行動がうまい具合にコミカライズされており、笑いの中にちょっぴり寂しい彼の姿が描き出されています。大河内傳次郎、風見章子の演技も素晴らしい物ですし、名作と呼ぶにふさわしいでしょう。
あと、脇役がいいです。洋裁の先生マーガレット中田(清川虹子)。マーガレットいいよマーガレット(笑)。キャラクターはもちろんですが何と言ってもその名前がね。インパクト抜群でありました。
数ある邦画の中でも超おすすめ作品です。見るものに困ったら是非手をつけてみて下さいね。
スポンサーサイト



テーマ:DVDで見た映画 - ジャンル:映画

  1. 2009/01/01(木) 19:21:39|
  2. 映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

怪獣総進撃(1968)―超お祭り映画

前作あたりから明らかに子供向けになり、没落を始めた昭和ゴジラシリーズ。一方テレビにはウルトラマンやマグマ大使が登場し、怪獣映画は子供のものというイメージが定着し始めます。特に前者の功罪は大きいものがあると思います。毎週かなり質の高い特撮を提供していた反面、特撮は子供のものというイメージを固定し、「マイティジャック」や「怪奇大作戦」の商業的失敗を引き起こしたとも言えますから。
話を戻しましょう。「怪獣総進撃」はそのようなムーブメントの中で作られた作品です。前作のように小さくまとまってしまうのか?そんなことはありませんでした。予算が徐々に削られていく中、東宝特撮スタッフの底力が垣間見えるのがこの作品です。
ストーリーは単純で、「怪獣大戦争」とほぼ同じ。宇宙人による地球侵略ものです。総進撃という位なのでたくさん怪獣が出てきます。ゴジラ、ラドン、アンギラス、キングギドラ、ミニラ、モスラ幼虫、クモンガ、マンダ、ゴロザウルス、バラン、バラゴン。ただ、最後の二匹は1カットのみで実際に出たとは言い難いです。新しく加わったメカSY-3や自衛隊の怪獣迎撃作戦が画面いっぱいに展開され、特撮が子供向け路線に走る中大人の鑑賞に十分堪える名作に仕上がっています。昭和ゴジラシリーズ屈指の名作と言えるでしょう。
ただ、見ていていつも気になるのは最後の怪獣の格闘シーンです。イヤ、別に出来が悪いというわけではないのです。キラアク星人が最初から操っているキングギドラと地球怪獣連合軍との戦いになるのですが、明らかにリンチです。ゴジラ、ラドン、ミニラ、アンギラス、ゴロザウルス、モスラ、クモンガVSキングギドラ1匹。冷静に見るとイジメです。今までの作品ではギドラは宇宙に逃げ帰っていたのですが、遂に絶命します。まあ、筋金入りの悪だからかまわないのですかね。

テーマ:DVDで見た映画 - ジャンル:映画

  1. 2008/12/29(月) 11:55:42|
  2. 映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

黒澤明―蜘蛛巣城

黒澤明の「蜘蛛巣城」を見ました。一九五七年度作品。シェークスピアの「マクベス」の筋を忠実に時代劇として翻案したものなので、「マクベス」の書評としても読めるように心がけたいと思います。
あらすじは有名ですので特に書くことはしません。魔女の預言に振り回され、野心に火のついた武将の破滅の物語ですね。マクベス夫人は悪女として演劇界に今でも君臨し続けています。映画では山田五十鈴が好演、っていうか怖かった。シラーの「ヴァレンシュタイン」に出てくるテルツキ夫人もマクベス夫人の影響を受けているように思いました。
この映画は日本発のシェークスピアとしては本国に最も影響を与えたものだと云われています。黒沢は能をもとにして、内面からではなく型からキャラを作った。そういう試みが、内面からキャラを作ることに慣れきった欧米にとっては新鮮だったみたいです。
データ的なことはこの辺までにしておいて、主観的な感想を少しばかり。この映画を見ていて感じたのは「間」の重要性。音楽も台詞もなく静止している場面が往々にして見受けられます。それでも心情などは伝わってくる。映画が視覚芸術たる所以であります。映画も音楽や台詞にとらわれずにここまでできると云うことを示した作品だともいえると思います。芸術全てについて言えることだと思いますが、説明的になるほど、芸術性は落ちる。映画は特にそう。サイレント映画が輝きを失わないのもこのため。
また、黒澤明は映画は娯楽であると思っていたようで、後半の戦の場面などはかなり迫力があります。芸術と娯楽性が両立した傑作だと思います。
余談ですが、浪花千栄子が演じていた物の怪、あんな感じのやつがアニメ「千年女優」に出てきていた気がします。ここから影響を受けたのでしょうか。それか、「蜘蛛巣城」にも影響を与えている能を参考にしたのか。どっちが本当のところかはよく分かりませんが。

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

  1. 2008/12/03(水) 17:06:33|
  2. 映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

デジタル放送の映画と欺瞞

我が家も遂にスカパーを導入し、日々スペクトルマンを録画してるわけですが、当然のことながら他の映画も録画したりします。HDがすぐにいっぱいになってしまうので、頻繁にDVDを作ります。チャンネルの性質上、日本映画ばっかりです。
最近では「零戦燃ゆ」とか「日本のいちばん長い日」とか。これからの予定としては「日本海大海戦」とか「連合艦隊」あたりですか。趣味が丸出しですな。「エロス+虐殺」を見逃して真っ青だったんですが、どうやら再放送がありそうなので一安心。
ところが、デジタル放送はDVDをVRフォーマットにして録画するため、他の機器で見ることができない。ファイナライズしたんで、他のVRフォーマット対応のプレイヤーで見ることはできるのかなと思ってはいるのですが、家の他の機器は悉く全滅。まさかPCでもダメだとは思わなかったよ、畜生め。
こうなってくると気軽に人にDVDを貸したりすることもできなくなってきます。自宅でしか楽しめないと思うと、DVDも何だか有り難みが薄れてきます。
デジタル放送に合わせて、何でもかんでも制限するのは正直どうかと思いますね。結局は海賊版の横行を見るだけでしょうから。

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

  1. 2008/08/25(月) 21:22:06|
  2. 映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

挫折亭十蘭

Author:挫折亭十蘭
文学部の書生、世を捨てて、仮想世界に庵を建てる。
芸術を愛で、読書したり、廃墟に行ってみたり。

なお、廃墟への交通手段、侵入方法等の質問に関しては、お答えできかねます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる