急に涼しくなりました、そして急に忙しくなりました。さて、妙なタイトルをつけましたが、私自身が岩波文庫の多読をするわけではありません。門屋建蔵「岩波文庫の赤帯を読む」と「岩波文庫の黄帯と緑帯を読む」(青弓社)の書評を書こうと思ったのです。(以下「赤」、「黄緑」と略します。)
私自身はといえば、さほど岩波に対する思い入れはないつもりです。ただ、岩波でしか読めないものもあるので、世話になることは多いのですが。
内容についてですが何だかなァといった感じです。「赤」に岩波を選んだ理由が述べられています。非常に納得のいくものもあります。しかしどうしてもいただけないところがあります。それは
「他の文庫より訳が良さそうである」というものです。
確かにすばらしい訳も存在します。藤沢令夫の「オイディプス王」や手塚富雄の「ドゥイノの悲歌」などは傑作中の傑作といえるでしょう。それにトーマス・マンの訳もかなりのものだと思います。しかし、シェークスピアの訳に関しては新潮文庫の福田恆存訳の圧勝ですし、ボードレールの「悪の華」は堀口大学や斉藤磯雄の訳が存在します。
ダンヌンツィオの「死の勝利」は新刊で買って、泣きたくなりました。これは青帯の話になりますが、カントの翻訳はめちゃくちゃを通り越してくちゃくちゃですし、ヘーゲルは長谷川先生の「歴史哲学講義」以外は使い物になりません。アリストテレスのニコマコス倫理学に関しても悪いことは言いませんから京都大学出版会のものを使いましょう。白帯の「資本論」、向坂先生の訳なんて…過激派が怖いので自重します。スネークマンショウじゃないですけど、
いいものもある、だけど悪いものもあるんです。この本は本を買った場所とかも記録しているので、古書店を知ったり、在庫切れで存在を知らなかった文庫を知るには手っ取り早いかも知れません。
「黄緑」の方は訳の心配はありません。純粋に作者の文章と対面できますからね。小説に関しては特に文句はないのですが、短歌はちょっと好みがあわないみたいです。西行や定家があまりに適当に扱われている気がします。千載和歌集は読んだことないのでよく分りませんが、順当に行けば、新古今がリストに入ると思うのですがね。
とまあ、今回はかなり辛口でしたが、私もそれだけ文学や哲学に思うところがあるということでしょう。良訳や良書を厳選した新たな文庫というものができたらいいなと思う今日この頃でありました。
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- 2008/09/28(日) 21:07:24|
- 文学
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